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課題にマッチしたセグメンテーションとは

更新日:7月10日

2.事業にそったセグメンテーションを行う


 顧客セグメンテーションの重要性を理解したところ(前の記事)で、次に具体的な区分方法について見ていきましょう。効果的なセグメンテーションを行うためには、様々な角度から顧客を分類し、それぞれの特性を把握することが重要です。


 

2.1.デモグラフィックな区分


 デモグラフィックな区分は、最も基本的かつ広く使用されている方法です。この方法は、客観的で測定しやすい特性に基づいて顧客を分類します。主に以下の二つの要素から構成されています。


  • 人口統計:年齢,性別, 所得, 職業, 学歴, 家族構成 など

  • 地理要因:国, 地域, 都市, 気候 など


 これらの要素は入手が容易なデータであり、基本的な顧客プロフィールを作成する際の出発点となります。例えば「男性の30代から40代を対象にする」という区分は、ほとんどのマーケティングレポートに必ず含まれています。


 しかし、デモグラフィックな区分だけでは、顧客の行動や選好を完全に説明することはできません。そのため、より深い洞察を得るためには、他の要素と組み合わせることが重要です。


 

2.2.心理・行動特性


 心理・行動特性に基づくセグメンテーションは、デモグラフィックな区分よりも深い顧客理解を可能にします。この方法は、心理的特性や行動パターンに焦点を当てることで、デモグラフィックデータだけでは捉えきれない顧客の本質的なニーズや動機を理解するのに役立ちます。


  • 心理特性:ライフスタイル, 価値観, 興味・関心, 個性 など

  • 行動パターン:購買頻度, ロイヤルティ, 製品使用状況, 意思決定プロセス など

  • 期待する価値:製品やサービスにもとめるベネフィット など


 例えば、同じ年齢や所得層の顧客でも、その価値観や行動パターンによって、全く異なる製品選択をする可能性があります。


 さらに心理や行動とは、性質が異なりますが「期待する価値」もこれらに準ずる要素だといえます。フィットネス事業を例にとると顧客の年齢・性別・心理的傾向が同一であっても「ダイエット」を目的としてるのか「筋量の増加」を目的としているのかで、顧客にとるべきアクションは異なります。


 また、これらの要因を多変量解析にかけることで、リアルで複雑な顧客の姿を抽出することができます。一般的には、心理特性の回答をもとに因子分析とクラスター分析を実施することで、類似性の高い顧客同士によるクラスター(グループ)を作成して、戦略を立案します。この方法により、集計による素朴な判断よりも精緻なセグメントを選定することができます。


 心理・行動特性によるセグメンテーションは、より実用的なターゲティングやコミュニケーション戦略の立案に寄与し、顧客との深い関係性構築に貢献します。ただし、これらのデータの収集と分析には、デモグラフィックデータに比較して専門知識が必要となります。


 

2.3.目的にそった区分を考える


 事業のフェイズによっては、目的に合致する区分方法を独自に設定することも求められます。例えば、①既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の評価、②新規事業や新製品開、③顧客サービスの改善や効率化などの目的に応じて、条件を検討します。


表2.3.


① 顧客の継続年数に基づく区分:顧客の成熟度に応じたマーケティング戦略や顧客維持施策を立案することが可能となります。

② イノベーション採用者カテゴリーに基づく区分:新しい製品やサービスの普及過程を理解し、各段階に適した戦略を立てることができます。

③ 顧客の問題解決能力と要求水準に基づく区分:各顧客グループに最適なサポートレベルを提供し、顧客満足度の向上とコスト最適化の達成を目指すことができます。


 セグメンテーションは既存の区分にのみ依存した固定的なものではなく、ビジネスの目的や課題に応じて柔軟に設計されるべきです。重要なのは、顧客を分類するだけでなく、その分類が具体的なアクションにつながることであり、実行可能な施策を意識したセグメンテーションが求められます。


 

 また、それぞれのセグメンテーションは、互いに組み合わせることで、実用的な顧客理解につながります。例えば、「イノベーター」の中でも、年齢層や価値観によって異なるアプローチが求められる可能性もあれば、よく接触するメディアにも差があります。


 効果的なセグメンテーションを行うためには、常に「なぜこの区分が必要か」「この区分によって何を達成したいのか」を問い続けることが重要です。目的に沿った適切なセグメンテーションを行うことで、より効果的なマーケティング戦略の立案や顧客体験の向上が可能となるのです。


 

2.4.PDCAサイクルに組み込む


 セグメンテーションには、継続的な改善と最適化も実施することが可能です。市場環境や顧客ニーズの変化に対応するには効果的でもあります。以下は、PDCAサイクルにセグメンテーションを組み込んだ図です。アプローチとしては一案ですが、このようなサイクルを前提にすることで常に最適な顧客セグメントを維持し、ビジネス戦略に活かすことができます。


図2.4


Plan(選択と集中)

データ収集: 顧客データや市場データの収集

セグメント分析: 収集したデータを基に顧客セグメントを分析

ターゲットセグメント選定: 最も価値のあるセグメントを選定


Do(戦略)

製品/サービス開発: 選定したセグメントのニーズに合わせた製品やサービスの開発

マーケティング戦略立案: ターゲットセグメントに効果的なマーケティング戦略の策定

顧客体験設計: セグメント特性に基づいたカスタマイズされた顧客体験の設計


Check(価値創造)

成果測定: 実施した戦略の効果を測定(売上、市場シェア、顧客満足度など)

顧客フィードバック収集: ターゲットセグメントからの直接的なフィードバックを収集

市場反応分析: セグメンテーション戦略に対する市場全体の反応を分析


Act(改善と最適化)

戦略の見直し: 測定結果とフィードバックに基づいて現行戦略を見直し

セグメント再評価: 市場環境の変化や新たな洞察に基づいてセグメントを再評価

新たな機会の特定: 分析結果から新たな市場機会や改善点を特定


 このPDCAサイクルを通じて、セグメンテーションの精度と有効性を継続的に向上させることができます。また、市場の動向を常に把握し、変化に迅速に対応することで、競争優位性を維持や、持続可能な成長に貢献します。

 

 顧客セグメンテーションは、企業が顧客を深く理解し、効果的なマーケティング戦略を立案するための重要なツールです。デモグラフィックな区分から始まり、心理・行動特性、目的に応じた区分、そしてPDCAサイクルへの組み込みまで、様々なアプローチを組み合わせることで、より精緻で有効なセグメンテーションが可能となります。


 

 JISCOでは、ビジネスの文脈を反映したオンライン調査(既存データの分析)でのセグメンテーション作成や、ブランドイメージや顧客満足度の調査設計から分析・示唆までワンストップで対応しています。



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